アパート経営は長期の資産運用として行うものですが、手放すことが賢明な場合もあります。そのタイミングを見極めてアパートを売却することは、投資物件の選定と同じくらい重要です。
目次
物件売却のメリットとデメリット
物件売却のメリットとデメリットは、物件や経営者(投資家)の個別事情、不動産市況や税制などのマクロ情勢によって異なってきますが、主なものとして以下の項目が挙げられます。
● 売却メリット
- リスクの低減
どれほど優良な物件でも、先進国の国債や大手銀行の預金のように信用力の高い高格付の金融資産と比べれば、資産が目減りするリスクは大きくなります。アパートは地震や台風などの災害で焼失するかもしれませんが、金融資産は天災でなくなることはありません。老後の生活資金に充てたいなどの理由で絶対に失いたくないものは、元本保証型に近い金融商品で運用する方が賢明です。 - 管理負担の削減
アパート経営では、入居者の募集・契約、退去後の清掃・修繕・敷金精算、家賃の回収、管理委託費・水道光熱費・損害保険料・税金の支払いなど、多種多様な管理業務が生じます。それらを管理会社に委託していても、その実施状況の報告を受けて確認する必要があります。管理会社の仕事ぶりに問題があれば契約を打ち切り、他の業者を探さなければなりません。アパートを売却して銀行に資金を預ければ、そうした業務から解放されます。 - 投資機会の確保
保有物件を売却して資金を確保すれば、新たな資産運用が可能になります。例えば、外為相場は円高(円安)に向かうだろうという自分なりの見通しがあれば、アパートの売却資金を外貨預金やFX取引に使うことで利益を狙うこともできます。また、よりよいアパートを探し出せる状況であるならば、保有物件を売却して他の物件に乗り換えることも可能です。手元現金(頭金)が多くなればローンも組みやすくなるため、より幅広い物件を投資対象とすることができます。
● デメリット
- 譲渡益課税の発生
経営主体(法人・個人)、課税方式(総合課税・分離課税)、保有期間(短期譲渡・長期譲渡)の相違により課税内容は異なりますが、アパート売却で譲渡益が発生すれば納税額は増加します。税額を押さえるためには他の損失・費用と相殺する必要があります。不採算物件の損切りに合わせてうまく高収益物件を売却できなければ、譲渡益の4割近くを納税することになる可能性があります。 - 譲渡損失の発生
高値で購入した物件を売却すれば、譲渡損失が発生するかもしれません。その際、上記のように他の利益と相殺できなければ損をしただけで終わってしまいます。さらに赤字が膨らめば、銀行の融資スタンスは厳しくなります。アパート経営者の所得や資産全体に与える影響次第ですが、新規物件の購入資金を借りられなくなる恐れもあります。 - 運用収益の低下
国債や預金など、高い格付の金利商品の利回りが限りなくゼロに近いなか、数パーセント以上の運用利回りを期待できるアパート経営には大きな魅力があります。今は、1億円の定期預金を設定しても1年で1万円の利金しか得られない時代。アパート経営の利益が少しでも出ているのであれば、慌てて売却して銀行に資金を寝かせるのはもったいないかもしれません。多少のリスクを取らなければ運用利益を確保できない状況を認識したうえで、資産構成を考えることが大切です。
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売り時を見極める要素①:物件・経営者の事情
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- 投資期限の到来
アパート経営を始める時点で、設定した投資期限が到来したら物件を売却するという考え方です。その時までにいくらもうかり、いくら損をしているのかではなく、1つの投資プロジェクトを終えるものとして捉えます。投資物件の数が少ない段階では割り切れないかもしれませんが、プロの投資家はこうしたドライな発想で保有物件を入れ替えています。 - ポートフォリオのリバランス
アパート経営を順調に拡大してきた人の場合、所有物件の構成(ポートフォリオ割合)を見直すために売却することもありえます。物件の所在地、住戸数、間取り、築年などのバランスを修正するために、十分な利益を確保できる物件を手放すことも考えられるからです。プロが運用する不動産ファンドでは、物件のタイプ、所在地、規模などの構成比率を設定しています。これが崩れそうになると物件の入れ替えを行いますが、それと同じ発想となります。 - 現金の確保
単純に現金を必要とするために売却することもあるでしょう。その際、物件売却によってローンを返済した後、現金がいくら手元に残るのかを計算することが大切です。売却代金でローンを返済しきれない場合は、アパートの収益性が改善してから売却する方が賢明です。それまでは、他の方法で現金を調達できるかどうかを検討しましょう。 - 赤字物件の損切り
残念ながら、赤字が続いている物件を損切りすることもあります。その場合、自分なりの損切り基準を決めておくことが重要です。累積赤字が1000万円になったとき、自らの課税所得の合計額が500万円を下回った場合などの基準を設定して、それに該当すれば直ちに売却することが重要といえるでしょう。
売り時を見極める要素②:市況・税制などのマクロ情勢
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- 不動産市況の悪化
不動産市況が全体的に悪化すれば、当然ながら所有物件の価格が下落する可能性も高くなります。しかし、バブル崩壊やリーマンショック、コロナ情勢などの要因により引き起こされる市況悪化は、大半の市場参加者が認識しています。そうした状況で売り抜けようとしても、足元を見られて買いたたかれるのが常でしょう。
高値で売るためには、バブル末期に当時の大蔵省(現・財務省)が行った不動産関連融資の総量規制、リーマンブラザーズ証券が破綻する引き金となったサブプライムローンを使った仕組債価格の暴落などから市況悪化を予測して、いち早く売却できる眼力が求められます。 - 取引コストの増加
消費税率は今後引き上げの一途を辿ります。不動産の場合、建物や付属設備には消費税が適用されるため、建物などの評価価格が5000万円であれば、消費税率が2%上げられると買い手のコスト負担は100万円増加します。現行の不動産譲渡益に対する分離課税率は、所有期間が5年以内の短期で約40%(国税・地方税)、長期は約20%(同)ですが、これも引き上げられる可能性があります。物件価格が変わらなくても、コスト負担が増加すれば買い手の意欲はそがれるでしょう。お得感のある税率引き上げの前に売却するという考え方も1つです。 - 維持コストの増加
2017年の税制改正によって、新築タワーマンションにかかる固定資産税が増税されました。その内容は、中間層より上層階では1階上がるごとに0.256%増える一方、下層階は1階下がるごとに0.256%減るというのもです。こうした税制度の変更は突然行われるもので、アパートに影響する税制もいつ見直されるか分かりません。
また人手不足などにより、清掃や設備点検などのコストが大幅に上がる可能性もあります。これらに伴って収支見通しが大幅に悪化する場合は、売却を検討すべきでしょう。
売却を成功させるためのポイント
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- 出口戦略ありきの投資
アパートをうまく売却するには、購入時点で出口(売却)戦略を考えることが不可欠になります。投資期限、目標利益、損切り基準などを定め、それらに当てはまる状況になれば直ちに処分することが重要です。また、不動産市況が過熱し多額の売却益を見込める状況であれば、積極的に処分を検討するとよいでしょう。
例えば、投資期間10年、目標利益1000万円とした場合で考えてみましょう。過去の累積利益が400万円で、600万円以上の売却益が見込めるならば売却を考えてもよいでしょう。逆に、600万円未満の売却益しか得られないと判断したなら引き続き保有して、賃料収入による利益の積み上げを図ることが望まれます。もちろん、10年後に「あの時売却すれば、売却しなければよかった」と思うこともあるでしょうが、それは結果論です。大切なのは自ら方針・戦略を決めて実行することなのです。 - 売り時は買い時
アパートの売り時は買い時でもあります。そうでなければ取引は成立しません。自分が物件を売ろうとするとき、買い手は何を考えているのか、どのような人(企業)が買い手になるか、という分析は欠かせません。高収益物件の場合は立地や規模など、当該物件の属性から投資家像が浮かび上がってきます。
例えば、立地条件に恵まれた古いアパートや一戸建て住宅なら、再開発を計画する大手デベロッパーの買収対象になっている可能性も大いにあります。このように、誰が何の目的で買うのか、それらの可能性を整理すれば売却戦略が立てやすくなるのです。
資産運用は「投資、保有、売却」の繰り返しです。株式のデイトレーディングもアパート経営も、その本質は変わりません。保有期間が異なるだけです。売却戦略を立てることは、次の投資検討の前提条件でもあります。アパート経営で成功するためには、的確な出口戦略の立案が不可欠になることを覚えておきましょう。
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