アパート経営を始めるにあたって、事前に決めるべき要素はたくさんありますが、その中でも重要になってくるのが物件の場所をどこにするのかということでしょう。物件の場所によって購入価格や設定家賃が大きく変わってくることは、説明するまでもありません。今回はざっくり、アパート経営は首都圏と地方都市のどちらが有利なのかというテーマで考えてみましょう。
表面利回りは都心より地方が上の傾向
年間の家賃収入の総額を物件価格で割り戻した数字である「表面利回り」は、基本的には大きいほど儲かる仕組みになっているため、物件を探す上で最初の目安とされています。この表面利回りは、物件価格が小さくなるほど大きくなるので、土地の価格が安い地方に行くほど都心よりも上になります。
ある大手不動産会社が2016年上半期の投資用物件の価格と利回りの動向についてまとめたデータによると、都心5区(千代田、中央、港、渋谷、新宿)の表面利回りは4.94%、23区西(中野、杉並、練馬)は5.92%、横浜・川崎は6.93%でした。このように同じ首都圏でも、都心から遠ざかるにしたがって利回りは高くなっているため、地方になればもっと上がっていくことは想像がつきます。表面利回りが13~15%になる地方都市も珍しくありません。
空き室率が低いのは都心、実利回りは上のことも
表面利回りだけを見ると地方は魅力的だが、問題は入居付けだ。不動産投資は入居者がいてはじめて投資として成り立つ。表面利回りはあくまでも常に満室状態での計算上の数字のため、入居者が付かなければまったく意味のないことになる。
この空室リスクが大きいのは地方であることは明白だ。地方から人口が流出し、都心に一極集中していることは連日メディアで報じられているとおりだ。また、特に人口減少が激しい田舎の方や駅から距離のある郊外の物件になると持ち家率が高く、そもそも賃貸住宅の需要自体が低く表面利回りが高くても、そもそも入居者自体が付きにくい。
これに対し都心部は、仕事を求めて全国から多くの人が移住してくるため空き室率が低い。特に駅から近い、日用品を購入できる店舗がそばにあるなどの条件が整った立地であれば賃貸住宅の需要は常に発生している。このため、都心部は空室リスクが少なく、利回りが低くても利益が出しやすい。都心部であれば満室をキープすることも夢ではないのだ。
さらに、表面利回りに対し、全収入から管理費や固定資産税などの諸経費を差し引いた実収入を、物件購入価格と購入に伴う諸経費の合計額で割った「実質利回り」というより実態を表す指標もある。実収入が少ないと、実質利回りは都心の方が上回ることもある。
都心は土地の価格が下がりにくいので物件価格も安定
国土交通省の地価公示データから2001年から2016年の地価変動率を見ると、東京圏は79%、大阪圏は67%、名古屋圏は83%、地方中枢都市(札幌、仙台、広島、福岡)は72%、その他の地方平均は60%となっています。ここから分かることは、都心は地方に比べて土地の価格が下がりにくいということです。
これは、物件価格が安定していることを示しています。不動産投資で収益を高めるには、所有期間中のインカムゲインだけでなく、売却時のキャピタルゲイン(ロス)のトータルで考える必要があります。家賃相場の下落リスクや管理にかかるコスト、売却時の流動性なども考慮しておくのです。この点で、地方よりも都心の方が安定しているといえそうです。
先ほどの地価変動率からもう一つ言えることは、都心や地方の中核都市である大阪、名古屋圏ではここ1、2年で地価が下げ止まっていることです。一方、それ以外の地方では下落傾向が一貫して続いている。地方の人口流出傾向は今後も改善の予兆は見られず、今後も衰退傾向は続くでしょう。空室リスクが高まれば、家賃を下げるなどの対応が迫られます。これから地方の物件に投資するには、明るい材料はあまり見込めないと言えるでしょう。
やはり都心が優位か
以上、見てきたとおり、どうやら地方よりも都心や首都圏の方がメリットはありそうだ。周りの環境も今後どのように変化を遂げるのかわからないため、人口の減少が少ない立地を厳選して選ぶことが重要といえよう。
しかし、都心にあるから安心というわけではない。繰り返しになるが、不動産投資は所有期間中と出口戦略のトータルであるため、やり方によっては地方でも利益を得られることも、逆に都心でも失敗することもあり得るという点に注意が必要だろう。