一般的に、株式投資は難しいものといわれます。確かに、機関投資家でさえ利益をあげるのに苦労しているのですから、決して簡単なものではありません。
しかしながら、株式投資の難易度を下げることは十分に可能です。
そこで重要となるのがリスク管理、中でも資金管理です。
ここでは、株式投資で成功するための資金管理について、基礎知識から具体的な方針まで詳しく解説します。
資金管理の重要性
資金管理とは、投資に一定の基準を設け、その基準から外れないように投資資金を管理することです。
資金管理の目的は、余裕資金を保つことにあります。
初心者にはあまりピンとこないかもしれませんが、資金管理の重要性は古今東西を問わず常に重視されてきました。
東西の相場格言
例えば、日本の相場の古い格言に「“相場のカネ”と“凧の糸”は出し切るな」とあります。
凧揚げでは、凧の上昇に合わせて少しずつ糸を出していくのがコツです。最初から糸を出し切ってしまうと、糸がたるんで凧が落ちてしまいます。
株式投資も同じで、資金管理を徹底して常に余裕を保ち、凧の糸がピンと張ったような状態が良いというわけです。
またウォール街の格言にも「資金を限定し、運用範囲を内輪にせよ」とあります。
これも「凧の糸を出し切るな」ということです。凧の糸に一定の余裕を保っておくように、投資する資金を限定し、あくまでもその範囲内で「一区切り」の投資を完結させよという意味です。
上限を設定するメリット
株式投資でいう「一区切り」とは、買ってから売るまでの一連の流れを一区切りとします。
例えば、A株を100株買い、数ヶ月後にこの100株を全て売却したならば、それが一区切りです。A株を100株買い、その後数ヶ月をかけてさらに500株買ったならば、後に600株を全て売却したところで一区切りとします。
上限額の範囲内で一区切りの投資に取り組むのですから、まずはこの上限を設定するのが資金管理の第一歩です。上限設定が適切であれば、残りの余裕資金が侵されることはなくなり、一定の水準を保つことができます。
株式投資では、投資先の会社が倒産した場合には株価がゼロになり、多額の損失を被るリスクがあります。自己資金を全額投じていた場合には、その時点で退場を余儀なくされるわけです。
しかし、あらかじめ設定した上限の範囲内で取り組むならば、最悪の場合にも余裕資金が手元に残るため、投資を継続することができます。
もちろん、資金的な余裕は精神的な余裕にもつながり、相場が大きく動く局面でも冷静な判断がしやすくなります。
これが、「株式投資の成功の秘訣は資金管理にあり」とされる理由です。
理想的な資金管理は?
ここで問題となるのが、投資資金の上限をどのように設定するかです。
伝統的な考え方では、2分の1または3分の2を上限とします。これは、現代の株式投資でも十分に通用する基準でしょう。
この基準を大きく超える場合、余裕資金が乏しくなるため資金管理としての用を成しません。
2分の1を上限とする考え方、そして3分の2を上限とする考え方をそれぞれ見ていきましょう。
2分の1を上限とする場合
2分の1を上限とする場合、例えば自己資金が100万円ならば、このうち投資に回せるのは50万円が上限となります。
現物取引で行う
注意したいのは、この50万円は証拠金ではないということです。株式投資では、信用取引によって自己資金の3倍まで取引できます。50万円の証拠金であれば、最大150万円まで投資できる仕組みです。
しかし、資金管理の目的は「50万円の余裕資金を確保すること」であり、「損失を最大でも50万円に止めること」が絶対条件となります。50万円を証拠金として150万円の取引をした場合、損失の程度によっては余裕資金まで割り込んでしまう恐れがあります。
したがって、自己資金の2分の1を上限として、なおかつ現物取引に限定することが重要です。
資金管理が慎重さ・計画性につながる
50万円の現物取引で一区切りの投資を完結するのですから、あまり思い切った売買はできません。
1株1000円の銘柄であれば、買えるのは最大でも500株です。
一度で500株を買うのではなく、まず100株買って様子を見て、下落したところで200株の買い増し、そして上昇基調が強くでたらもう200株買い増しといったように、複数回に分けて買う流れになるでしょう。
上限を設けずに「100万円まで買える」と考えるならば、一度に500株を買っても「まだ半分」という意識になりやすく、無計画な投資に陥ることが多いです。
50万円に限定する場合、そもそも「上限を設ける」という慎重な姿勢が出発点になるだけに、取り組みも自ずと慎重・計画的になります。
無計画に投資する人と慎重に投資する人のどちらが成功しやすいか、これは言うまでもありません。
3分の2を上限とする場合
3分の2を上限とする場合、資金使途が明確になります。
3分の2の内訳は、「本玉に3分の1、増し玉に3分の1」です。
本玉3分の1
本玉とは、その区切りの中で取るポジションの中でも、軸となるものです。
例えば、長期にわたって下落を続けてきた株が上昇に転じた場合、その後の上昇による利益を期待して買いを入れます。
このとき、大底(最安値付近の価格)を捉えるのは難しいため、資金を小出しにしながらなるべく底値付近でまとまったポジションを取ることができれば上出来です。
このように、一区切りの売買の中でコアとなるポジションを本玉といいます。
増し玉3分の1
増し玉というのは、本玉を作った後の値動きに応じて、さらにポジションを増やしていくことです。
上昇基調も下落基調も、その傾向に強弱はあるものの、一直線に上昇・下落することはなく、時折反動を見せながら推移します。一時的な下落のタイミングでさらにポジションを増やすことで、利益を高めていくのが増し玉の役割です。
資金管理を通じて本玉と増し玉を明確に分けることが、投資効率のアップにもつながります。
資金管理で増し玉がうまく
しかしながら、増し玉には危険も伴います。
それまで万事うまく運んだこと、また本玉では順調に含み益が発生していることから、大胆な(無謀な)増し玉に奔る危険があるのです。本玉を建てた時に比べて株価は上昇しているのですから、増し玉によって本玉を含む平均建値の上昇は避けられません。
無計画な増し玉をすれば、せっかく成功した本玉も台無しになってしまいます。
「増し玉を3分の1」と限定することで、増し玉による危険を減らしつつ、なおかつ利益を高めようとするのが「本玉に3分の1、増し玉にも3分の1」の考え方です。
シンプルな資金管理でありながら、これを守ることによって長期的に大きな効果が期待できます。
まとめ
この記事では、資金管理の重要性と基本方針について解説しました。
資金管理を怠ると、株式投資が失敗に終わる可能性が高いです。資金管理を徹底すれば、少なくとも失敗に終わる可能性は低く、それなりの成果をあげることも十分に可能です。
投資資金の上限を2分の1とするか、3分の2とするかについては、個人の好みによって分かれるでしょう。どちらを採用しても資金管理の目的に適う方針であり、株式投資に取り組むうえで必ず役立ちます。
これから株式投資を始める人は、リスク管理の中でも特に「資金管理」を念頭に取り組むことをおすすめします。