アパート経営を検討するなかで「どのくらいの利回りが必要なのだろうか?」と、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事ではアパート経営に必要な利回りの目安を、地域別・築年数別に解説します。本記事を読んでいただければ、アパート経営に必要な利回りがわかるため、物件選びの軸を明確にできるでしょう。
アパート経営を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
アパート経営における利回りとは
利回りとは「投資金額に対する年間収益の割合」です。
たとえば、100万円を支払って年間10万円の収益が発生する場合の利回りは10%です。
計算は単純ですが、アパート経営はさまざまな支出や収入があるため、どの費用を計算に組み込むべきかを考えなければいけません。
本章では、アパート経営の利回りに関する正しい知識を身につけるために、以下2つの内容を解説します。
・利回りを決める要素
・利回りの計算方法
利回りを決める要素
アパート経営の利回りを決める要素は、以下の3つです。
・初期費用
・家賃収入
・ランニングコスト
それぞれがどのような費用かを理解して、利回りを計算してみましょう。
初期費用
アパート経営にかかる主な初期費用は以下のとおりです。
・土地の購入代金(新築の場合)
・アパートの建築費(新築の場合)
・地盤調査費用(新築の場合)
・土地・建物の購入代金(中古の場合)
・印紙税
・登記費用
・ローンの事務手数料・保証料
・不動産取得税
・仲介手数料
・火災保険料
アパートの建築費は構造によって価格が大きく異なります。
構造 | 建築費の相場(坪単価) |
木造 | 50〜70万円程度 |
鉄骨造 | 60〜90万円程度 |
鉄筋コンクリート造 | 80〜120万円程度 |
また、建築費以外の費用は売買代金や固定資産税評価額などによって変動します。正確な利回りを算出するためにも、購入する前に見積書を作成してもらいましょう。
家賃収入
アパート経営で得られる家賃収入は以下のとおりです。
・家賃・共益費
・礼金
・更新料
家賃や共益費は毎月得られる収入です。一方、礼金や更新料は2年に一度の更新時や、入居者が入れ替わった際に受け取ります。
金額の設定は自由ですが、共益費は家賃の5〜10%、礼金や更新料は家賃の1〜2ヶ月分程度が一般的です。敷金は退去時に入居者へ返金するので、家賃収入には含めません。
ランニングコスト
アパート経営にかかる主なランニングコストは以下のとおりです。
・固定資産税・都市計画税
・管理委託費
・修繕費
固定資産税・都市計画税は不動産を所有している限り毎年課される税金です。購入前に毎年どの程度の税金がかかるのかを把握しておきましょう。
また、アパートの管理に手間をかけたくない方は管理会社へ管理を委託するのがおすすめです。管理委託費は家賃の5%程度と考えておきましょう。
さらに、ランニングコストを考えるうえで欠かせないのが修繕費です。アパート経営では突発的な設備の故障が発生する恐れがあるため、家賃収入の5〜10%程度は積み立てておきましょう。
利回りの計算方法
アパート経営における利回りの計算方法は以下の3つです。
・想定利回り
・表面利回り
・実質利回り
それぞれの特徴や計算式を解説します。
想定利回り
想定利回りとは、アパートが満室稼働している状態を想定した利回りです。新築中の投資物件の広告では、見込み賃料をもとにした想定利回りが記載されています。
【計算式】
想定利回り=満室稼働時の年間家賃収入÷物件価格×100 |
たとえば、次のような条件で想定利回りを計算してみましょう。
・家賃:6万円
・部屋数:6部屋
・購入価格:5,000万円
6万円×6部屋×12ヶ月÷5,000万円×100=8.64% |
想定利回りでは、対象アパートを購入した際の最大利回りを計算できます。しかし、あくまでも想定であるため、実際の利回りと乖離が生じる可能性がある点に注意しましょう。
表面利回り
表面利回りとは、購入価格に対する年間家賃収入の割合です。中古投資物件の広告などに記載されています。
【計算式】
表面利回り=年間家賃収入÷物件価格×100 |
想定利回りと異なるのは、現状の家賃収入をもとに計算している点です。たとえば、次のような条件で表面利回りを計算してみましょう。
・家賃:6万円
・部屋数:6部屋
・稼働数:5部屋
・購入価格:5,000万円
6万円×5部屋×12ヶ月÷5,000万円×100=7.2% |
表面利回りで計算すると、現状の収益性を把握できます。しかし、購入時の諸費用やランニングコストは加味されていません。おおよその利回りを把握する分には問題ありませんが、表面利回りのみで判断しないようにしましょう。
実質利回り
実質利回りとは、物件購入時の諸費用やランニングコストを加味して計算する利回りです。
【計算式】
実質利回り=(年間家賃収入-ランニングコスト)÷(物件価格+購入時の諸費用)×100 |
実質利回りを用いることで、実態に近い収益性を把握できます。たとえば、以下のような条件で実質利回りを計算してみましょう。
・家賃:6万円
・部屋数:6部屋
・稼働数:5部屋
・購入価格:5,000万円
・購入時の諸費用:350万円(購入価格の7%)
・ランニングコスト:65万円(年間家賃収入の約15%)
(6万円×5部屋×12ヶ月-65万円)÷(5,000万円+350万円)×100=5.51% |
同条件で計算した表面利回りは7.2%でしたが、実質利回りは5.51%と大きな差が生じました。収益性を正確に把握するためにも、購入する際には必ず実質利回りで計算しましょう。
アパート経営の平均利回り
利回りの計算方法がわかりましたが、どの程度の利回りが必要なのか不安な方も多いでしょう。結論として、アパートの平均利回りは8%程度(表面利回り)です。
しかし、地域や築年数によって指標にすべき利回りは異なります。本章では地域や築年数による平均的な利回りを解説するので、購入を検討している地域や築年数に近いものを参考にしてください。
地域別の平均利回り
2022年9月の地域別平均利回りは以下のとおりです。
地域 | 平均利回り(表面利回り) |
全国 | 8.03% |
北海道 | 11.24% |
東北 | 12.6% |
首都圏 | 7.5% |
信州・北陸 | 11.9% |
東海 | 9.54% |
関西 | 8.85% |
中国・四国 | 11.4% |
九州・沖縄 | 9.5% |
参考:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 (けんびや)
利回りは首都圏よりも地方のほうが高い傾向にあります。しかし、利回りの高いアパートが必ずしも優れた投資先とは限りません。一般的に利回りが高い物件はリスクも高いため、将来的に安定した需要が見込めるかなどを踏まえて検討しましょう。
築年数別の平均利回り
2022年4月〜6月の築年数別の平均利回りは以下のとおりです。
築年数 | 利回り(表面利回り) | |
全国 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 6.67% 7.51% 9.65% |
北海道 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 8.03% 9.06% 12.02% |
東北 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 6.87% 9.89% 15.23% |
首都圏 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 6.63% 7.27% 9.06% |
信州・北陸 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 6.97% 10.63% 14.79% |
東海 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 6.84% 8.37% 11.36% |
関西 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 6.67% 7.32% 11.07% |
中国・四国 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 7.1% 8.85% 12.66% |
九州・沖縄 | 築10年未満 築10年〜 築20年 | 6.93% 7.72% 10.76% |
参考:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 (けんびや)
いずれの地域も築年数が経過する毎に利回りが高くなっています。築年数の経過したアパートは短期間でまとまった収益を得られる可能性がある一方で、一度退去すると、次の入居者が決まりにくいリスクがあります。
キャッシュフローの改善や老後の資産形成など、アパートを経営する目的に応じて物件を選びましょう。
まとめ
本記事ではアパート経営に必要な利回りの目安を、地域別・築年数別に解説しました。
アパートの平均利回りは8%程度(表面利回り)ですが、地域や築年数によっても異なるため、購入を検討している地域の平均利回りを確認してみましょう。
また、アパートの利回りは新築であれば想定利回り、中古であれば表面利回りで記載されているのが一般的です。しかし、最も重要な指標は実質利回りであるため、購入時の費用やランニングコストをもとに、より実態に近いシミュレーションをしてみましょう。